■ 競技用DLG機 Hayabusa 10 の製作



■機体の設計




hayabusaシリーズ10機目の機体となります。

ネーミングはhayabusa十(プラス)
十は漢数字の10をなぞっています。

これまでhayabusaシリーズではナロー翼機を指向してきました。
ナロー翼機に正確な定義がある訳ではありませんが、下記のように整理してみました。

翼面積

中央翼弦
ナロー翼機

19〜20dm2

165ミリ前後
標準機

21〜22dm2

180ミリ前後

ナロー翼機のメリットデメリットをまとめると次のとおりです。

メリット

デメリット
ナロー翼機

・軽量でも必要翼面荷重※1が確保できる。
・尾翼面積も小さくできるので尾翼の抗力も低減できる。
・非力ランチャーのランチに有利。

・安定性に欠ける
・ 安定性を求めるとメリットを打ち消すことになる。
・強風下で不利

※1 進入性を確保する上で、翼面荷重は経験的に11.5g/dm2程度必要と考えています。

振り返るとここ2年間に製作した機体の殆どナロー翼機です。
(唯一の21.0 dm^2機は早々に空中衝突で大破しました)

それで、久々に標準機を飛ばしてみたくなりました。
標準機を飛ばす事で機体コントロールに変化が出るかも・・
ランチトレーニングの上でも重量のある機体で変化が出るかも・・

標準機ということで特徴らしい特徴はないのですが、次のスペックで製作に取り掛かりました。

 

要素
寸法系
翼面積
 21.8dm^2
翼平面形
 中央翼弦180ミリ
翼型

 AH84 mod

翼面荷重
 11.5dm^2
機体重量
 250g程度

 

■PODの製作

POD樹脂の養生に良い方法がないかと考え、シュリンクチューブを用いてみる事にしました。予め、雄型に合わせてシュリンクさせます。

入手したのは直径が大きすぎた(40ミリ)ので細い部分はシュリンクしきりませんでした。(Hobby King Turnigy Heat Shrink Tube 40mm Yellow )

細い部分は止むを得ずカット。背割りで開いて取り外しておきます。

今回入手したものはかなり厚みがあります。

クロスに樹脂を塗ったあと、準備しておいたシュリンクチューブをカバーし、梱包用ラップ(正式名称:ストレッチフィルム)をグルグル巻きにします。クロスの分だけ直径が大きくなるので背割りの部分にクリアファイルを差し込みました。

作業はかなり楽です ヾ(´ρ`)ノ゛

ストレッチフィルムの部分は凸凹になりますので後で硬化後に削ります。

※完成写真は撮り忘れました (;^_^A


 
■主翼バギング

コアはO工房さんにカットをお願いしました。

2010年の住宅エコポイントの影響で断熱材が不足して一時的にスタイロフォームが入手困難となっていましたが、1月になって入荷したとのことで早速カットをお願いしました。

コア重量:22.8g。面積が大きい分重めです。

参考までにO工房さんでは高温でカットされているのでカット表面が溶けて硬く剛性が上がっており、手切りしたものと比べると腰がありしっかりしています。ただ、その分若干(1〜2g)重くなっているように思います。

マイラーシートはPP(ポリピレン)製のものを新調。このシート、PP製なのでWAXが不要なのです。

関西ではメジャーなホームセンター”コーナン”で入手できます。サイズ:565x980。厚みは0.75ミリ。

厚みがあるので前縁部分はハンドルーター(ペーパーロール)とサンドペーパーで薄くします。PPは比較的柔らかいので前縁部分を削る際に仕上げ面に傷がつかないように注意します。(それでも傷が付いてしまいました。残念ながらこの傷は仕上げ面に転写されます)

いつものように和紙貼りします。江崎模型のPLYSPANは巾が60センチなので1枚では足りません。

以前はマイラーに55のりを細く吹いて和紙をセットしていましたが、55のりの部分だけ光沢が無くなるのがネックでした。

今回は予め和紙をジョイントしておいて、マイラー上で樹脂を塗ったあとにカットする事にします。アクセントの黒いラインのところでジョイントしています。黒いラインの部分は和紙2重となります。

こちら、裏面用の和紙。白と赤のツートン。約1センチオーバーラップさせて、55のりでくっつけておきます。

尚、和紙2重貼り部分の段差は殆ど出ません。

Cボックス用のカーボンはクラフトるうむさんのテスト仕入品を特別に譲って頂きました。

このカーボンは平織りになっていて厚みが薄いのが特徴です。

樹脂が浸透しやすく、繊維もほつれにくくきれいに仕上がります。

カーボンスプレッド(TX−1クロス )の良さと一般のカーボンクロスの良さを併せ持った優れものです。このカーボンクロスが市販されるのを期待したいです。

いよいよバギングです。

今回は先にマイラーシートに5052樹脂をローラーで塗ります。

和紙(江崎模型PLYSPAN)を乗せて、上からもう一度ローラーで5052樹脂を塗ります。先に樹脂を塗ることによって和紙に浸透させる工程が楽になりました。

このあと、マイラーシートに沿ってはさみで余分な和紙を切り落とします。

ネームは無地の和紙にプリントして重ね貼りしています。

これ以降の工程の写真はありません。

樹脂作業完了。

真空引きパックの両面からネガティブコアでサンドイッチして集成材(反りがないもの)で押さえます。

この上に電気毛布をかけ、さらに重しを載せて養生します。

冬場は電気毛布が必須です。但し、電気毛布で温度を上げるとパックのポリエチレンが伸びるので フードセーバーを用いる場合はあまり上げてはいけません。その点真空ポンプの場合は気にする必要はありません。

↓温度を上げるとパックのポリエチレンが伸びてシワシワになります。

真空ポンプはLinicon LV-125。

真空引きの装置についてはこちらをご覧下さい。

きれいに出来上がりました。

今回はある程度の重量を確保したかったので樹脂の吸い取りも行わず、たっぷりと塗りました。

トリミング前重量65.9g→トリミング後62.5g程度になりました。

主翼完成総重量はペグ込みで130g弱になるでしょう。(機体重量は250g程度を予定していますのでちょうど良い重量です)


 
■主翼の組立て
 

ハードポイント(主翼をビス止めする部分)はバルサブロックから切り出します。

必要なもの
・上半角約7度の型紙
・オルファ ホビーのこ
・カッターナイフ
・サンドペーパーを木材に貼り付けたもの
これだけ揃えておけばサクサクと作れます。

主翼の穴はバギング前にカッターを入れておくことできれいに掻き出すことができます。

主翼接合後の穴明けは木工用ドリルを使用します。

木工用ドリルは外周を切り込むケガキ刃がありますのでカーボンやアラミドを綺麗に切り抜けます。

尚、穴あけした後、低粘度の瞬間接着剤を流し込んで穴の周囲のバルサを固めます。

■胴体の組立て


今回の機体は重量に余裕があるのと、強度確保の為にクラフトるうむのパイプを使用。

軽量化したい場合:クレールstrong01(15g前後)
強度確保したい場合:クラフトるうむCR1809 (20g前後)

を使用します。

ポッド用ハッチ受けの製作

雄型を利用して左写真のようなハッチ受けを作ります。材料は200gグラス+57gグラスを使用します。

ハッチ受けの大きさは
外側 : ハッチ + 5〜6ミリ
内側 : ハッチ - 5〜6ミリ
に切り出します。内側は曲線ハサミでカット。

この時点ではラフカットでOKです。

カーボンパイプをホールドする為のバルサを瞬間で貼付けておきます。

瞬間接着剤でポッドの内側に貼り付けます。

雄型の外面で作ったものを雄型の内面に相当する部分に貼り付けますので若干Rが沿わない部分がありますが、中粘度瞬間で埋めてしまいます。

貼り付けた後に#240〜320のペーパーで3〜4ミリになるように削ります。

貼り付けた後で削るので、作業が楽でかつキレイに仕上がります。

尚、開口部が一回り小さくなりますのでその前提でハッチの大きさを決めてください。

塗装後(リンケージ後)の写真です。

塗装するとハッチ受けと一体感が出ます。

ハッチの裏側に1.6ミリのカーボンロッドを中粘度瞬間で中央部分のみ貼り付けます。

低粘度瞬間だとロッド伝いに接着剤が広がってしまうのでNGです。

ロッドの太さはいろいろ試しましたがこの太さがGOODです。

完成写真。

 

■完成


今回は1ヶ月で完成しました。(これまでで最速です)
この分だと1年で12機も夢ではない・・ いやいや無理です。

今回のカラーリングはhayabusaシリーズでは初めての全面赤。
尾翼にはグラデーションをつけてデザイン的にも精悍なイメージに仕上がりました。



若干テールヘビーの感がありましたのでノーズに4gのバラストを搭載して
BATT込みの重量はジャスト250g。 予定通りの重量となりました。

思えば、2008年に競技用として始めて製作した機体も同じような主翼面積でした。
当時は軽さを求めて230g台に仕上げましたが、あちこちに強度不足の部分がありました。

その後いろんなことを試して元に戻ってきた気がします。



製作記事には記載しませんでしたが、水平尾翼は従来比5% 垂直尾翼は従来比10%
大きくしました。というか、これまでのナロー機では小さくしていましたので標準寸法に戻しました。

フライトインプレションですが、安定性がとても良いです。
ナロー機にありがちな”ヒラヒラ感”がなく、スワリが良いので
大舵を打つ事も少ない気がします。

かといって旋回性が悪い訳でもなく旋回もスムーズです。

スピードの対応巾も大きいので様々なコンディションに対応できると思います。

で、ランチのほうは、やはり腕にズシっときます。
残念ながら私のような非力ランチャーにとってはナロー機程上がりません。

でも、ハードランチャーの手にかかれば、苦にはならないでしよう。

重心はまだもう少し詰める余地がありますが
今後の主力機になりそうです。