主翼コアカット その2



■テンプレート設計


話が前後しますが、テンプレートの設計方法です。
CADの使用を前提に解説しますのでCADをお持ちで無い方は
お知り合いに頼むなどしてください。

高井さんのブログに『テンプレート作成補助ツール dxFoil 』が紹介されています。
datファイルからテンプレートの雛形をdxfで出力するツールです(高井さん作)

テンプレートは翼弦線(赤点線)で上下に分割します。
前縁側は20ミリ程度、後縁側は20ミリ程度の余分をとります。

後縁側を長く取ることは重要です。
バギング時にネガティブコアでサンドイッチして養生することで
後縁の波打ちを防ぎます。
さらに下のイラストにあるように後縁の余分は水平ではなく主翼上面のカーブに沿って
ゆるやかに勾配をつけておくと良いです。

スタイロの巾はテンプレートの巾から10ミリ程度小さくます。
テンプレートの後縁側とスタイロの後縁側をあわせると
前縁側はテンプレートの方が若干長くなります。
ここに熱線を載せてスタートさせるとカットが楽です。


前縁部の処理(45度で熱線が通りやすくする方法)

前縁部分の形状は以下のように決めます。

前縁側の水平部は翼弦線(赤一点鎖線)より1ミリほど下げます。
( 上用は翼弦線(赤一点鎖線)より1ミリほど上げます。)

そこに翼型に接するように45度の線を引きます。

余分な線を整理します。

前縁部の処理(Rをつけて熱線が通りやすくする方法)

最近は左図のようにφ8〜10程度のRをつけており、この方がスムーズと感じています。

また、上面テンプレートの切り始めの水平部はテンプレート高さを前縁の中心線より2mm低く、下面テンプレートの切り始めの水平部はテンプレート高さを前縁の中心線より2mm高くしています。

これはRをつけることでオリジナルの前縁形状が崩れるのを防ぐ為です。

■テンプレートのダウンロード(Template Download)

これまで 製作した中での傑作機のデータを公開します。

Hayabusa10

Salpeterを参考にしています。薄いサーマルも捉えてサーマルハントの醍醐味を楽しむことができます。Hayabusaシリーズの中でもお気に入りのひとつ。競技会にも参加した機体です。

主翼面積:21.6dm2
翼弦:180mm
翼型:Ah84

 

主翼平面型 plan download

テンプレート template download

これまで 製作した中での傑作機のデータを公開します。

Hayabusa18

snipeを参考にした競技志向のナロー機。足があり、広いエリアでの飛行が楽しめます。競技会にも参加した機体です。

主翼面積:19.6dm2
翼弦:160mm
翼型:AG18〜AG19

 

主翼平面型 plan download

テンプレートtemplate download

ヒンジライン Hinge line download

補強カーボン Stiffening carbon download

■テンプレートのレーザーカット(1.5mm航空ベニア)

主翼テンプレートをレーザーカットしで作成してみます。

ネットを調べると、近所にレーザーてもらえる所を見つけましたので

厚1.5ミリA4サイズの航空ベニアを持ち込んでカットしてもらいました。

dxfデータを送ればカスタムカットしてもらえます。
正確なカットが必要なパーツ、カットが面倒なパーツ、
今後、役立つケースも多いかと思います。

テンプレートのレーザーカット

3ピースなので全部で6枚。レーザー彫刻で文字も入れてもらいました。

レーザーカットは正確なのですが、あまりにも正確なために、翼型データのポイント数が少ない場合は多角形になってしまいます。レーザーカットをすれば完璧かというと、一概にそうはなりません。データ次第です。

今回も一部多角形になってしまいました (ノ_・。)

熱線の走行面を滑らかにする為に低粘度瞬間接着剤を染みこませます。

多角形になってしまった部分を補正する為に薄く盛った後、#320-400のサンドペーパーで完全に滑らかにします。

こういう場合、指の感覚が一番たよりになります。

台所用アルミテープを巾2ミリ程度にカットして走行面に貼ります。アルミなので3次元の曲面にもそれなりに馴染んでくれます。

アルミの上を走る事で、熱線の熱が奪われてしまうせいか、端面のみ溶け込みが少なくなります。その結果端面のみ(微妙にですが)一回り大きくなってしまう傾向にありますので、接合後に削って滑らかにします。

■アルミ テンプレート

合板(航空ベニア)のテンプレートは
加工がしやすいというメリットがありますが、一方で熱に弱く熱線の温度を上げると
テンプレートそのものがが熱の影響で凸凹になりやすいです。

そこでアルミテンプレートの作り方も紹介します。

手加工での切り出しを前提に0.3mmのアルミ板を使用した加工方法です。
0.3mmのアルミ板は薄いので 金属用はさみで簡単に切り出せる一方、
腰が無いので熱線カットの際には工夫が必要です。

熱線カットの際は腰が無い点をカバーする対策が「必要となります。

(尚、アルミ板をレーザーカットする方法が一番楽チンだと思います。)

0.3mmアルミ板

ホームセンターで購入

PCからプリントした紙をスプレー55のりで0.3mmアルミ板に貼り付けます。

直線部分はカッターで刃型をつけた後にカッター目に沿って2,3回折り曲げるとパキンと簡単に割れます。

曲線部分(翼型部分)はハサミを用いて注意深くカットします。

カット後にサンドペーパーで削りますので、翼型のラインのちょうど外側を狙ってカットします。

CADのラインにも線幅がありますので線のちょうど外側でカットした後に線幅の中心までサンドペーパーで削るイメージです。

前縁部分はハサミでのカットは困難ですので無理せずに削り代を残してカットし、あとで棒やすりで削ります。

その後、#320-->#800-->#1000-->#1500のサンドペーパーで表面を滑らかにします。

 

上面側と下面側でワンセット。

写真の赤線の交差点には0.6mmのピンホールを空けます。ピンホールは上面側と下面側の全く同じ位置に開ける必要がありますので2枚重ねて穴あけします。

熱線カットの際には下面側から先にカットします。

0.3mmのアルミ板に腰が無い欠点をカバーする為にマグネット(円盤型マグネット)を任意の枚数積み上げてテンプレートを押さえつけます。この方法は有効に機能します。

積み過ぎると熱線が引っかかるので注意しましょう。

続いて上面側のカット。

テンプレートのずれを防ぐピン(マチ針)が見えます。上の写真(下面側カットのテンプレート)と同じ位置に差します。

テンプレートの作り方をビデオにまとめました。(Youtube)

■スタイロブロックの準備


スタイロフォームはJIS3種の『スタイロエースU』(関東では 『GKU』)を使用。
JIS1種の『スタイロフォームIB』は密度が小さく、直貼りに適していません。

『スタイロエースU』は一般に店頭にはありませんので取り寄せてもらう必要があります。
ちなみに『スタイロフォーム』はダウ化工株式会社の商品の商品名で、
薄い青色なのでブルーフォーム などと呼ばれています 。

カネカの商品は『カネライトフォーム』でアイボリー色です。
一般には ダウ化工の製品の方が入手し易いようです。

蛇足ですが2010年末から2011年前半にかけて住宅エコポイントや大震災仮説住宅
などの影響で品薄となっていましたが2011.8には回復して現在はそのようなことはありません。

数年前は1枚¥1500でしたが、現在は1枚¥2000 程度します。

スタイロブロックの準備をする前に、面倒でも型紙を準備します。

両サイドに余分を設けるなど、最終仕上がりとは異なる寸法で切り出しますので、暗算でやると必ず寸法を間違えます(経験者は語る)

3ピースなので3枚準備します。

翼弦方向はコアカット時の翼型テンプレートの長さよりより5ミリ程度短く。

翼巾方向は必要寸法に左右それぞれ10ミリプラスした寸法。

3×6板(910x1820)は大きすぎて取り回しが大変なので屋外で910x910にカットして、家に持ち込むようにしています。ちなみに管理人は店頭でカットして車に積み込んで返ります。購入する際には鋼尺とカッターを持って出かけます。

型紙をあててケガキすれば間違う事はありません。通常、カット時に必ずと言って良いほど失敗がありますので1セットは余分を準備すると良いでしょう。

カッターでカットするのは左の写真の状態まで。

ここからは熱線カットします。熱線カットにはコツがありますので、下記を参考にしてください。

写真のようなガイドを準備します。T字型の金物をコの字型のアルミ材にクリップで留めています。コの字型のアルミ材の内部にマグネットを入れてカット台にセットします。

上記のガイドを2セット準備して、電熱線をT字型の金物に沿って動かす事で直角にカットできます。

尚、平面型をカットする際は写真のように片手でコアを支えながらカットします。平面型を手放しでカットしようとすると自重でモーメントが加わるせいでカット面が歪みます。写真のように片手で支えておくのが最もシンプルな方法です。

カッターナイフでカットした面は垂直(直角)にならないので、カッターで粗カットする部分は1センチ程度大きくカットした後、熱線でカットします。

コアの平面型カットが終わりました。

ちなみにスタイロフォームには方向性があるようで、スタイロフォームの長手方向をスパン方向にとるようにします。

※大差はないとは思いますが、念のためそうしています。

ついでに・・

尾翼用のコアは写真のように15ミリのL型アルミアングル材に沿わせて線熱線を走らせることでスライスできます。

L型アルミアングル材はマグネットで固定。

翼巾方向の両サイドを10ミリずつ熱線カットすれば、4方熱線カットのブロックが完成します。

■熱線について

熱線は0.28ミリのステンレス線を使用していましたが、テンションを上げると伸びてしまいます。

電源として、安物の車用バッテリー充電器を使用しているので、電圧・電流のコントロールができないのも難点です。

だましだまし使っていましたが、一番大きいピースがビビってしまいました。

熱量が不足しているのでしょう。


Nさんのお誘いで0.4ミリのインコネル線を入手していましたので交換。

以前は「エボル有限会社」さんで取り扱われていましたがHPが閉鎖されているようです

インコネルは高温特性に優れた超合金(商品名)で、テンションをかけても伸びる事はありません。

ちなみに電熱線は写真のように皿頭ビスに8の字に巻きつけ、ビスに巻きつけるようにしています。

脱着が楽です。

(上の写真は下面を撮影しています)

これでビビりがかなり少なくなりましたが、微妙に残っていますのでもう少し熱量が必要なのでしょう。

抵抗値を調べてみるとステンレスと大差は無いようですので、線径の違いによって電流が増えて熱量が増したのだと思います。

カットの様子をビデオ撮影しました。


※ビデオは編集して掲載しています。
実際、こんなにスムーズにはいきません (;^_^A