■ 競技用DLG機 Hayabusa 18 の製作



■機体の設計

 

hayabusaシリーズ18機目の設計です。機体シリアルNo.32

遅ればせながら、ナロー翼機の製作。



2014年のトレンドはVladimir Model の snipe

まさに一世を風靡といった感じです。

日曜工作ランドではhayabusa9シリーズでナロー機を製作しましたが、
デメリットも大きいので最近ではお蔵入りとなっていました。

ナロー機のデメリットと言えば

・飛行姿勢が安定しにくい---->操縦しにくい。
・低速域で沈下が大きい---->渋いコンディションには向かない

といったところでしょうか。

snipeの場合、 これらのデメリットを帳消しにするランチ高度が獲得できるのに加え
低速域での沈下が比較的小さく抑えられているということで今やコンペティター御用達の機体となっています。

私はといえば、自作派のこだわり(意地)として市販機は飛ばさないので取り残された感じ・・・

そこで今回はsnipeをお手本にナロー機に再チャレンジします。

■主翼

これまでのヨーロッパ機では珍しいナロー翼。主翼面積は19.6sdm、中央翼弦は160mm

平面形はテーパー比が比較的小さく、翼端の絞りが少ない。

翼型は”originally from Joe Wurtz(ジョーワーツ オリジナル)”ということで
翼型名称さえも公開されていません。

でも観察するとアンダーキャンバーがとても大きいことに気が付きます。
さらにアンダーキャンバーが翼端一杯までついています。

これらが、翼効率のUPに寄与しているのでしょう。

上半角は5.5度とかなり少なめ。ランチ高度獲得に重きをおいた設定です。

■尾翼

うちわのように大きい垂直尾翼(2.00sdm)はランチ時のヨー安定に

小さめの水平尾翼(2.14sdm)はランチ時の抗力低減に寄与していると思います。

水平尾翼はブームの下側に取り付けられています。

■胴体

必要強度はパイプで確保する方式のPOD。軽量化に寄与しています。

エルロンホーンリンケージの内装メカニズムはとてもシンプルで秀逸なものです。
エルロンホーン回りに発生する乱流を大幅に抑えていることでしょう。
これを開発した人は偉い!

あと、最近の市販機はだいたいそうなのですが、主翼の取り付け位置がいわゆる”肩翼”方式



自作の場合、作り易さの点で”高翼"方式が多いのですがランチの観点からは不利。
この観点からは"低翼”が最も有利なのでしょうが
今のところ低翼方式を採用しているのは”Concept”のみですね。

■リンケージ

水平/垂直尾翼はトーションバー方式の糸引きリンケージ
軽量化に大きく寄与しています。

■重量

通常仕様は250g(翼面荷重12.7g/dm2)、後から発売されたLightバージョンは230g(翼面荷重11.7g/dm2)
この軽さも沈下率を低く抑えるポイントとなっているでしょう。

 

■hayabusa18の設計

主翼平面形、尾翼平面形、モーメントアームなどは主要デザインはsnipeを参考にします。

経験的に、ナロー機は軽く作ることがとても重要です。目標重量は230g。
主翼は100g程度で仕上げる必要があります。

軽量化の為にラダーは糸引きにします。
ワイヤーリンケージは3g程度ありますので、ノーズに積むデッドウエイトを加えると5gは軽く出来るでしょう。
これは質量の集中化にも寄与します。

エレベーターのリンケージについてですが
管理人はエレベーターのニュートラルがずれるのがいやなので、はワイヤーリンケージとします。

主翼台座の高さはなるべく低くしてランチ時のロールを抑える設計にします。
また、水平尾翼はブームの下側に取り付けることで主翼のロールモーメントを打ち消しに有効に働くでしょう。

それでは早速製作に取り掛かります。

 

■主翼のコアの加工

コアカット用テンプレートの製図

1.5ミリの航空ベニアからレーザーカットで切り出します。

ついでに、サーボベッドやら主翼パイロンアンカーやらも・・

レーザーカットは近所の装飾屋さんでお願いしました。赤いのがレーザーカット加工機。下のジャバラは排気ダクト。最近は安いものだと100万円程度で手に入るようですけど、アマチュアには手が出ません。

ところで、このカット屋さんと交渉の結果、一般の方の対応もして頂けるとここと。”○○さんのラジコンのホームページを見た”と言って頂ければよろしいかと。

<お問合せは>
有限会社 イケダクラフト  松浦 様
URL:http://ikedacraft.com/
mail: matsuura@ikeda-craft.jp

<条件として>
・ データはCADで完全に仕上げてDXFデータ渡し。
・航空ベニアは郵送などの手段で依頼者が手配。
・恐らく、アルミの薄板のカットも可能でしょう。

<ついでにワンポイントアドバイス>
・ラインは重なりなく。(重なった線分があるとその分だけレーザーが走りますのでカットラインが太くなります。)
・ カットラインの巾は0.1ミリ程度ですので切りしろを気にする必要はありません。・線が一筆書きでつながっていると出来上がったピースが脱落してしまうので、できれば0.3ミリ程度線分を分断しておくと良い。値段はタイムチャージ。カットラインが長いと高くなります。左のは調子に乗ってたくさんカットしてもらったのでえらいことになりました。

これは前回カットして頂いた時のパターン

このくらいだと2000円位。

テンプレート完成。

写真の様に文字入れも可能。黒い点はコア固定用マチ針の穴、その下のラインは前縁ライン。ラインのつもりが指示不足で貫通仕上げになってしまいました。

この後、熱線の走行面に軽くペーパーをかけてからキッチンアルミテープを貼ります。

カット風景。

3セット作りました。

電源はスライダックトランス+カーバッテリー充電器の組合せ。熱線は0.4mmインコネル線。

以前よりは少なくなりましたがやはり何枚かは失敗します。

途中の工程写真は省略。

コア接合+整形後の体重測定:18.82g

軽い!

標準翼(21.5dm2)だと22g以上はあるので、コアの状態で片翼3gは軽い。

■主翼バギング

型紙の準備。

翼平面、カーボン型紙、エルロン型紙の3種類を作ります。

カーボン型紙を利用してウラヂミールのCarbonLineを切り出します。

ナロー翼なので使う量も少なくて省コスト!

750mm巾のCarbonLine生地から4枚とれます。

CarbonLineはSC39 2/30を使用しています。

バギングプレートへの着色。下地を隠蔽する為に、このあとMr.HOBBYのベースホワイトを吹き付けます。

完成写真。

※樹脂作業中は手がベタベタなので写真はありません。悪しからず。

CarbonLineのピンホールを防ぐ為に、江崎模型の翼紙貼り。
さらに、翼紙は雨に弱いので表面はクリア塗装を転写。手の込んだ構成です。

最近のシリーズは軽量化の為にエルロン部分は1.0ozのアラミド。

いいあんばいに上がりました。

体重は103g

目標は100gなので少しオーバーですが、まあ良しとしましょう。

ハードポイントを作って左右を接合します。

上半角はsnipeに倣って5.5度。

■尾翼の製作

尾翼もsnipeを参考に。

水平尾翼はブームの下側に取付けます。


snipeの図面を原寸大に拡大します。

垂直尾翼がデカイのなんの!Technical dataによると
垂直尾翼:2.00sdm
水平尾翼:2.14sdm

尾翼の型紙を切り出します。2つ折りにして切り出しで左右対称にします。

結局Snipeと殆ど同じにしました。

型紙を使ってアラミドの切り出し。アラミドはバイアスで使用しています。

コアは極限まで軽く!

垂直:2.03g、水平:1.92g

軽くする為に、翼型は崩れてしまっているかな・・・。

尾翼のバギングは養生が楽なのでフードシーラーで行います。

バギングプレートは100均のルーズリーフ バインダーを使用。

材質はポリプロピレン、厚さは0.6ミリ。 適度な厚さです。

透明のものより色つきの方が使い易い。

垂直尾翼

補強スパーとして0.15mmのカーボンキュアシートを割り込ませています。

重量:5.55g

水平尾翼

カーボンキュアシートの補強スパーに加え、巾5mmのカーボンテープを全巾に入れています。カーボンテープはヒンジラインに掛からないように注意します。

水平:5.67g

水平・垂直 合計で11.21g。

かなり軽くできました。

■PODの製作

JRの送信機XG8はその機能性でハンドランチには最適なのですが、

受信機RG411BLとの組合せでは過去に何度もノーコンに見舞われました。

苦肉の策でアンテナの取出し口を設けています。

ランチ時に乱流が起きそうなのですが

一応、この方法で今のところトラブルはありません。

サーボベッドは主翼コアテンプレートと共にレーザーカットしました。

ラクチンです。

補強の為に表面にはアラミドを瞬間接着剤で貼り付けています。

サーボがセットできました。

サーボはFUTABA S3154x2 JR DS318x2

■完成


完成!

全備重量228g(BATT・ノーズバラスト3.5g含む)

翼端は蛍光レッド
遠くに出すことが多くなってきたので、視認性も重要な要素。

 

そういえば、ウラヂミールの機体は全て蛍光色を採用していますね。

主翼裏面
カーボンはヒンジラインの手前まで。
カーボンがヒンジラインにかかると、エルロンの動きが渋くなるのでこのようにしています。

ラダーは糸引き(トーション方式)
エレベーターはカーボンパイプ+0.4ミリステンレス伸直線。

初飛行当日、この後 雨の為、早々に退散フライトインプレションは後日。

■フライトインプレション

狙いどおり、ランチが高い。目測でこれまでより5m位は高く上がっている感じです。
以前に製作したhayabusa9より高く上がります。

冒頭に記載したsnipeの様々な設計要素が複合的に寄与しているのでしょうが
やはり一番大きな要素は主翼面積でしょう。

また、ランチ時にドリフトが少ない気がします。大き目の垂直尾翼のせいでしょうか。
ランチが高いことで競技においても余裕ができます。

飛行スピードは比較的速く、サーチエリアがかなり広がります。
321競技でもかなりのアドバンテイジとなります。
また、風下に流れたサーマルを後から追い掛けるのにもとても有利。

ナロー翼に加えて上半角が少ないことも相俟って操縦は難しい。
特にスピードコントロールをしっかりしないと失速します。

標準翼機と比べて旋回時の高度損失が大きいです。
すなわち、薄いサーマルでの粘りに関しては標準翼機に軍配。
サーマルを外すと、てき面に降りてきます。

この機体、サーマルが無いところで回すのは厳禁、
極端な話、渋いコンディションではなるべく回さずに漂うのが得策のようです。

こうした意味で、操縦は中級/上級者向けといえましょう。