■尾翼の設計



■水平尾翼

 

■水平尾翼容積

水平尾翼は言うまでも無く、ピッチ方向を安定させる役割を果たします。

ピッチ方向の安定性を示す数値として”水平尾翼容積”があります。

水平尾翼容積 = (水平尾翼面積×モーメントアーム)/(主翼面積×主翼平均翼弦)

水平尾翼容積は水平尾翼面積とモーメントアームに比例します。
面積を小さくすると、水平尾翼容積が減少しますので、同じ容積を確保する為には
その分だけモーメントアームを大きくする必要があります。

下図はSALpeterのディメンジョン。

主翼面積:22.2dm2(中央翼弦184mm)
水平尾翼面積:2.32dm2(中央翼弦84mm)
垂直尾翼面積:1.70dm2

主翼平均翼弦=主翼面積/ウイングスパン=22.2/14.95=1.48dm

上図では主翼前縁から水平尾翼前縁までの距離が670mmです。
モーメントアームを簡易的に主翼・尾翼の前縁より25%の距離として
モーメントアーム=670-46+21=645mm=6.45dm

水平尾翼容積(簡易)=(2.32x6.45)/(22.2x1.48)=0.455

この値をひとつの基準として比較してみると良いでしょう。

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モーメントアームは重心を考える必要があるので寸法把握が難しいです。

そこで主翼前縁から水平尾翼前縁までの距離を代用値として把握するのもよいでしょう。

上に示したSALpeteは670ミリです。

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■水平尾翼の翼型

管理人はSuperGeeで採用されているHT22を使用していますが、
自作でバギングする際は翼型がくずれてしまいます。

経験的に、極端なことをしなければ翼型の違いによる大きな影響は無いと思われます。
翼厚は飛行性能というよりは、強度に影響します。

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■水平尾翼の平面形

平面形の違いによる影響をまだ試した事はありません。今後の検証課題です。

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■水平尾翼の面積

市販機のディメンジョンを集めてみました。

機体
主翼面積(dm2)
水平尾翼面積(dm2)
Sirius

23.4

2.30
SALpeter

22.2

2.32
Blaster3

22.86

2.39
Akcent2

21.41

2.25
Stobel v2

21.2

2.24
Steigeisen

20.68

2.03

Steigeisenはナロー翼なので別とすると、22dm2前後の主翼に対して2.3dm2前後の
面積を採用しているケースが多いようです。

重量や空気抵抗を意識して水平尾翼容積不足になることがないように設計することが肝要です。

どちらかといえば、水平尾翼容積を十分にとることを優先した方がよいでしょう。

 

■垂直尾翼

 

■垂直尾翼容積

垂直尾翼は、ヨー方向を安定させる役割を果たします。

ヨー方向の安定性を示す数値として”垂直尾翼容積”という尺度があります。

垂直尾翼容積 = (垂直尾翼面積×モーメントアーム)/(主翼面積×主翼平均翼弦)

水平尾翼容積で解説した考え方をそのまま垂直尾翼に当てはめて考えればよいです。

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■ランチのドリフト低減

ハンドランチグライダーにおいては、ランチ時のドリフトは大きなパワーロスとなります。
ランチ時の挙動をビデオでスロー再生すると瞬間的には30度以上(感覚的には45度近く)振れています。

垂直尾翼はこのドリフトに大きな影響を及ぼしますので
コントロールのし易さとは別に重要な要素として扱う必要があります。

単純に考えると、垂直尾翼容積を大きくする事で対応することになりますが
ドリフトの発生原因を考えると、質量が増加すると不利なことも頭に置いておく必要があります。

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■ラダーレスについて

ラダーは具体的に下記において重要な役割を果たします。

@オフセットによるランチ時のドリフト低減。
A旋回時の補助。              
Bハンドキャッチ時の軌道修正       

ただ、これらの機能がないと致命的かというとそうでもなく
ラダーによるデメリットを考えてラダーレス(動翼なしの垂直尾翼)とする機体もあります。

ラダーレスはメリット/デメリットのバランス論ですので賛否両論があります。
管理人はラダーレスはデメリットの方が大きいのではないかと判断しています。

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■垂直尾翼の翼型

Mark Drlera博士の設計したSuperGeeの非対称翼(翼型はHT23) の考え方は素晴らしいと思います。

すなわち、進行方行に向かって左側に揚力が発生するような翼型にすることにより
ランチ時のラダーオフセット量を減らす事で抗力低減を図っています。

経験的に最大翼厚は6mm程度必要です。

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■垂直尾翼の平面形

垂直尾翼は滑空時の翼端失速を意識する必要が少なく、 むしろランチ時の特性を意識します。

ランチ時の強烈なヨー方向の応力への対抗し、かつ100km/hを超える速度での
抗力をいかに少なくするかがポイントとなります 。

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■垂直尾翼の面積

市販機のディメンジョンを集めてみました。

機体
主翼面積(dm2)
水平尾翼面積(dm2)
Sirius

23.4

2.20
SALpeter

22.2

1.70
Blaster3

22.86

2.13
Akcent2

21.41

1.65
Stobel v2

21.2

1.74
Steigeisen

20.68

1.78

主翼面積とは相関がなく、1.7dm2前後と2.3dm2前後に大別できます。

コントロール性というよりは、ランチ時の抗力低減とドリフト低減のバランスから決まる数値でしょう。

 

■尾翼設計条件


■取付け方法

取付け方法
備考

<台座方式>

・一般的な方法
・迎え角の調節が出来ないので取付けは一発勝負。
・エレベータがアップトリムもしくはダウントリムのまま飛ばすと空気抵抗となる
・工作が簡単

<フライングテール>

・迎え角の調整が自由
・尾翼全体が動くので効率が良い
・自作は工作が難しい(強度と重量のバランス難しい)
・ステー部分で空気抵抗が増える

下の写真はBlasterに使用されているフライングテール用Vマウント。
単品で2000円強で販売されています。自作するより確実に工作できます。

■取付け位置(ブームの上下)

上下関係
備考

<ブームの上>

・市販機の多くが採用
・主翼後流の影響を受けにくい (のではないか?)

<台座無し>

・台座が無いので空気抵抗が低減できる
・ブームが干渉するのでエレベータを2分割にする必要がある

<ブームの下>

・リンケージがプル側でアップにできる
・主翼後流の影響を受けるのではないか?

■取付け位置(垂直尾翼との前後)

垂直尾翼との前後関係
備考

<水平尾翼が前>

・一般的な方法

<クロステール>

・水平/垂直共にモーメントアームが稼げる
・水平尾翼を駆動させるLクランクの工作が難しい
・Lクランクにより重量が重くなる)

<垂直尾翼が前>

・水平尾翼のモーメントアームが稼げる
・台座無しで取付け可能(エレベーター2分割の必要なし)
・垂直尾翼の取り付けに工夫が必要。(左の写真は側面付け)
・ラダーの駆動に工夫が必要(動翼を半分にする等)

■強度(水平尾翼)

備考

写真はランチの際、座屈した様子。ランチの時には水平尾翼にはとても大きな捻れモーメントが加わります。

幸いに脱落は免れました。

ランチの際、尾翼が飛んでしまうと、間違いなく墜落、大破します。座屈してでも機体に水平尾翼が残っていれば不時着も可能ですので、最悪でも脱落しない工作が必要です。

重量増少なく、強度UPするには0.15ミリのカーボンキュアシートを用いてスパーを入れるのが有効です。

スタイロコアにカッターで切れ目を入れて差し込みます。

1本では折れてしまった経験がありますので2本以上を推奨します。

 

■重量

 

尾翼は「出来るだけ軽く」仕上げたい

尾翼が重くなると、ノーズにバラストを積む必要が出てきます。
尾翼が1g増えるとノーズに3gのバラストが必要。つまり全重が4g程度増える事になります。

また、質量が重心から離れる事でイナーシャ(慣性)が増し、操縦性が悪くなる方向に振れます。

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尾翼を軽く作るのはとても重要なことですが・・・

重量と強度はトレードオフの関係にあります。
軽くできても強度不足だとランチの風圧に負けて座屈する例が良くあります。
(水平尾翼、垂直尾翼共)

座屈で済めばよいですが、脱落してしまった例を幾度も見た事があります。
尾翼が脱落すると機体が無事に帰ってくる確率はきわめて低く、悲しい結末が待っています。

「軽さ」と「強度」が両立する最適バランスを求める必要があります。

管理人は最近は、少し重くなるのを覚悟の上でアラミドで製作しています。
(今のところ、アラミド翼で座屈した経験はありません)

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軽量化の際の注意事項があります。

・面積不足に注意

面積を小さくすれば確実に軽くできます。
可能な限り面積を小さくするのは有効です。

ただ、主翼面積に見合った水平尾翼容積を確保しないと、機体性能を下げることになります。
機体性能を下げてまで尾翼面積を小さくするのは本末転倒です。

・翼厚を薄くしすぎない

表面積は殆ど変わらず、コアの重量のみが減ります
コアの重量が占める割合は僅かですので ので効果は微々たるもの。
それより、強度は厚さの2乗もしくは3乗に比例しますので
薄くすることにより 強度低下によるデメリットの方が大きいです。

・樹脂量を減らしすぎに注意

樹脂量が少なすぎると、コアへの付着力不足で剥離する場合があります。

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それで、結局どうすればよいかというと、なるべく合理的な方法で補強を行った上で
樹脂量を必要最小限にすることです。

■適切に管理した上で樹脂量を最小にする。

■重量比強度が高い補強方法で強度を確保する。
(カーボンキュアシートでスパーを入れるかもしくはカーボンテープ補強する)

尚、 マイクログラスは通常は25g/m2ですが18g/m2程度のものも販売されており
これを使えば若干軽くすることが出来ます 。

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■尾翼重量の目安

前述のSALpeterのサイズを基準として
水平尾翼+垂直尾翼の重量は12g未満(できれば11.5g程度) に仕上げたいものです。

アラミドの場合は上記+1gとなります。(重量増を覚悟で剛性UPを図る)

また、マイクログラス貼り+アクリルラッカー転写で鏡面仕上げにする場合も
同様に+1gを目安とすると良いでしょう。(重量増を覚悟で表面抵抗低減を図る)