■ 主翼の設計



■総論


主翼図面のダウンロードはページの一番最後にあります。

You can find the download part at the end of this page

DLG機の設計をするにあたり、まず航空力学の基本を学習すると良いでしょう。

また、模型飛行機は実機と比べレイノルズ数がかなり小さいこともあり

模型飛行機独特の世界がありますのでこれらも頭においておく必要があります。

前者は「よくわかる航空力学の基本」が図解入りで分かり易いですね。

後者は電波実験者の「模型航空機と凧の科学」や「模型飛行機―理論と実際」などにまとめられています。

         
   

 

あと、ネットで閲覧可能なものとして下記の資料を紹介しておlきます。

翼設計と製作方法

全日本学生室内飛行ロボットコンテスト
実行委員会提供資料

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DLG機の設計の草分けとして有名なMarkDrela博士のSuperGee(SuperGeeII)

その設計図には氏の理論に基づいたエッセンスが凝縮されています。

10年以上前とは思えない設計です。

その他SuperGeeIIに関するサイトはこちら

備忘録:重心に関する考察

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2010年の記事ですがグライダー開発で有名なPCM社のサイト

Fireworks(ファイアーワークス)5 flowの開発に関する以下のような記載がありました

 

●Fireworksの設計に際しての検証項目

 centered masses(重量の中央集中化)
 little masses(軽量化)
 little/high dihedral(低/高上半角)
 narrow wing tips(翼端の絞込み)
 little/high sweep back(低/高後退角)
 different aspect ratios (アスペクト比)
 different airfoils: HM51, AG foils, Zone foils, and mixes and strakes of these
  (翼型)
 asymmetrical stabs(非対称尾翼)
 stabs with higher aspect ratio(ハイアスペクト尾翼)
 different starting methods: steep or flat(打上げ勾配)
 shorter boom (ショートテール)

●飛行テストによる最重要ポイント

 centering masses to keep the radius of gyration low (重量の中央集中化)
 little flying masses (軽量化)
 the priority of these two points: centered masses are more effective than little masses.
 ( 重量の中央集中化は軽量化よりも効果的)
 The pilot has to start in different ways when the wind varies. This makes also a big difference.
 ( 風の変化に応じたコントロール)

これらは、HLG機の設計に関して非常に重要なファクターを示唆しいます。

それぞれの意図するところが何であるかを理解できる方は、
ベテランの方と言えるでしょう。

これらの要素をどうバランス良くまとめ上げるかが、HLG機設計のポイントです。

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さて、話をもう少し各論に移してこのページでは主翼をテーマとします。

HLG機の機体性能は主翼によってその7〜8割が決まると言っても過言ではないでしょう。

主翼の特性を決める要素:翼面積・翼型・平面形について体系的にアプローチしてみることにします。

 

■翼面積

 

翼面積は機体の性格を決める大きな要素となります。

ハンドランチグライダーはF3Kの競技規定に基づき、ウイングスパンは1500ミリ以内とされていますので

極端なテーパー比の主翼を除くと、翼弦が翼面積を左右します。

管理人は下記のような分類を行っています。

 

翼面積

中央翼弦の目安
ナロー翼機

19〜20dm^2

165mm前後
標準機

21〜22dm^2

180mm前後
ワイド翼機

22〜24dm^2

190mm前後

 
特性

ナロー翼機


非力ランチャーでもランチ高度が確保し易いのが最大のメリット。主翼抗力が少ないので重量の割に機動力があります。

上空でのサーチエリアも大きくとれますので人が行けないところまで足を延ばしてサーマルを捕まえることができます。そのままシンクに飲み込まれることもありますが・・・

デメリットとしては少々安定性に欠ける点。スピードコントロールをきちんと行う必要がります。スピードが落ちると沈下が大きくかつ不安定になるのでキャンバーコントロールをうまく行う事でカバーしてやります。

機体設計の面では、安定性を得る為にロングテール(尾翼容積確保)や高翼配置、上半角をやや多目にとるなどの工夫も有効です。

標準機


ナロー翼機と比較すると安定感があってコントロールし易い。少々ラフなコントロールとなってもリカバリーし易いことも含め、渋いコンディションで粘るにはこのくらいの主翼面積が必要です。

進入を良くするには主翼抗力に見合った重量が必要なので機体重量は250g以上をあった方が良いでしょう。これが非力ランチャーには少々きつくランチ高度がとりにくいです。
 

ワイド翼機


安定性がさらに増し、コントローラブル。翼面荷重の少ない機体では低速でまったりとした飛行が可能で、サーマルが薄い時などにも有効です。

主翼抗力がかなり大きくなりますのでスピードを持たせてサーチエリアを大きくとる為にはそれなりの翼面荷重を得る為の機体重量が必要です。

ランチも同様で、高度は上がりにくくなります。 この抗力に対抗する為にもそれなりの機体重量が必要となります。

ウエイトを積んでも翼面荷重に余裕がありますので、強風時にもヒラヒラしにくいのもメリットでしょう。

ランチパワーがないと、ランチ高度でハンディキャップとなります。

続いて、市販機の分類も行ってみます。
こうして並べてみると、22dm^2超えの機体が多い事が分かります。
そうすると22dm^2超えを標準機と呼ぶべきではないか・・とも思ったのですが
MarkDrela博士のSuperGeeを標準と考える・・とすれば異論はないでしょう。

また、偶然かもしれませんが国産機はナローが多いですね。
日本人の体力を考慮すると、海外機にナローのバリエーションが少ないからかも知れません。

 
機体
主翼面積
重量
翼面荷重

ナロー翼機

hayabusa25
19dm^2 200〜220g  
Falcon
19dm^2 200〜230g  
Flitz2
19.9dm^2
200〜236g
snipe2
19.65dm^2
205〜236g
10.4〜12.0g/dm^2
hayabusa9
20dm^2位 230g位 11.5g/dm^2
Steigeisen
20.68dm^2 260〜290g 12.6〜14.0g/dm^2
標準機
Stovel v2
21.2dm^2 240〜320g 11.3〜15.1g/dm^2
Akcent 2
21.4dm^2 274g 12.8g/dm^2
Progress
21.3dm^2 230g  
SuperGee
21.67dm^2 227g+バラスト70g 10.4〜13.7g/dm^2
Aspirin
21.99dm^2 250〜265g 11.4〜12.0g/dm^2
ワイド翼機
Twister2
22.0dm^2 250g 10.3g/dm^2
Fireworks 4.2
22.0dm^2 250g 10.3g/dm^2
SALpeter
22.2dm^2 245〜265g 11.0〜11.9g/dm^2
Mistral
22.2dm^2 260〜290g 11.7〜13.0g/dm^2
Voltex
22.35dm^2 ND  
Fireworks5
22.4dm^2 270g 12.0g/dm^2
Polaris
22.5dm^2 240〜380g 10.7〜16.8g/dm^2
Orion
22.8dm^2 ND  
Concept
22.8dm^2 255g 11.2g/dm^2
Blaster3
22.9dm^2 260g 11.3g/dm^2
Blaster2
23.25dm^2 280g 12.0g/dm^2
Sirius
23.4dm^2

260〜310g

11.1〜13.2g/dm^2

ND:データなし


もうひとつ気付いたことがあります。
翼面荷重の下限値が意外と小さいこと。

こうしてみると(特にワイド翼機では)下限値が11gそこそこにある機体が多いです。

 

■翼型


翼面積と共に機体の性格を決める大きな要素として、翼型があります。

この翼型からどのようにして揚力が生まれるのか?には触れずに

まずは、市販機の翼型データを表にしました。

機体
機体
翼型
主翼面積
HM系
輝龍
HM51(mod) 19dm^2台?
Sirius
HM51 23.4dm^2
AG系
Akcent 2
ag(mod) 21.4dm^2
Osiris
ag455ct-02r〜ag47ct-02r 20dm^2位
SuperGeeII
ag455ct〜ag46ct〜ag47ct 21.67dm^2
Fireworks 4.2
ag455ct-02f〜ag47ct-02f 22.0dm^2
Blaster2
ag45〜ag46〜ag47 23.25dm^2
Blaster3
ag45〜ag46〜ag47 22.9dm^2
Zone系
Fireworks5
Zone52〜51 22.4dm^2
AH系
Aspirin
ah84 21.99dm^2
SALpeter
ah160_9 22.2dm^2
その他
Twister2
VA160_7 22.0dm^2
Steigeisen
WO322-325 20.68dm^2
Stovel v2
LE7219 21.2dm^2
不明
Mistral
ND 22.2dm^2
Polaris
ND 22.5dm^2
Orion
ND 22.8dm^2
Concept
ND 22.8dm^2

ND:データなし


翼型データはあまり公開されていないので不明点が多いですね。

こうして見るとAG系の翼型が多く見えます。

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翼型のデータベース

翼型は下記のデータベースから入手することができます




データはXY座標のデータですので、ソフトを用いて図面化します。

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代表的なもの (というか、公開されているものを) 図面化したものを掲載します。

hm51、ag455、zone52、zonev2 の4つは翼厚を除くとそのフォルムはとても類似しています。

逆に翼厚が大きな相違点となります。

hm51 翼厚7.5%@22% Camber2.03%@33%
ag455 翼厚6.5%@22.5% Camber1.89%@32%
zone52 翼厚6.12%@22% Camber1.65%@31%
zone v2-60 翼厚6.16%@23% Camber1.6%@33.5%

これらの翼型は下に示すah84と比較すると前縁が尖っています。
さらにピークポイントがah84と比較すると下のほうにあります。
自作する場合は、この尖りが崩れないように注意して製作する必要があります。

zoneはag455やhm51と比べるとかなり薄翼です。

zone v2-60はzone52の進化型とでもいいましょうか。
最大翼厚や最大キャンバーがzone52と比較すると少し後ろに 移動しています。

 

次ににah84の翼型。

上記4翼型とは形状を異にします。
上記4翼型と比較するとアンダーキャンバーがかなりきつめです。
前縁が比較的丸く、 上記4翼型より位置が上にあります。
あと最大キャンバーの位置が 50%あたりにあります。

実はah84の翼型は公開されていません。
下図はRC Groupに投稿されているデータを図面化したものです。

拡大すると凸凹があります (・・;)

ah84 翼厚7.3%@23% Camber2.04%@50%

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このサイズの飛行機はビジネスや軍事に役立つわけでもなく、
学問やビジネスとして研究される機会が少ないので、ラジコンフライヤーによる研究が
その進歩と発展を支えているのではないでしょうか。

模型グライダーの中でもHLGは、ランチ時の時速は100kw/hを超える一方で、滑空時時は20kw/h程度ですから
レイノルズ数が5倍変化する事になります。
さらに、実戦における旋回時のフィーリングも含めての評価が必要ですから、
一筋縄ではいきません。

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各翼型の特性

管理人は翼型解析ソフトを使って解析している訳では ありませんので
理論的にどうだというのはよく分かりません (・Θ・;) 

経験的にいうと、薄翼(zone)はスピードにシビアで、ある飛行速度域で性能を発揮しますが
逆にその速度域を外すと沈下が大きい気がしました。

また、ah84は対応速度域が広く、特に低速でも失速しにくい気がします。

ag455やhm51はその中間というところでしょうか。

飛行中はキャンバーコントロールをしますし、エルロンを切ることで
翼型は常に変化することになります 。

そう考えると上に示した標準の翼型のみではなく、 スピード - クルーズ - サーマルの
各モードでの検証が必要となるでしょう。

さらに重心や主翼迎角の関係でも変化しますので簡単に結論が導き出せるものではありません。

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蛇足かもしれませんが、揚力と抗力について

おもしろい論文がありましたので紹介しておきます。

興味のある方はどうぞ。

 

■平面形



平面形に関するです。

後退角
理論的にはには上半角と同じ効果がありますので一定の後退角度を確保した方が良い。
テーパー比
同じ翼面積なら、中央翼弦を大きくし翼端を絞った方が、ランチスピードが上がる。但し、翼端を絞るとペグ回りの強度が出しにくくなる。
楕円形
理論的に最も効率が良いとされるが、翼型まで正確に削り出すのは困難。

次に市販機の平面形をまとめて見ました。


<後退角が少なめの平面形:Stobel>

 

<標準的な平面形:SALpeter>

 

<後退角が大きい平面形:Steigeisen>

後縁のラインも後退しています。

 

<きれいな楕円形の平面形:Blaster3>

前縁の後退角はSALpeterとさほど変わりません。
中央翼弦が大きくかつ、テーパー比が大きい平面形。

どの平面形が良いか?

いろいろ飛ばし比べて見るしかありません。

自作する場合、最初は代表的な平面形をコピーすると良いでしょう。

 

代表的な機体図面のリンク集を作成しておきました。

Stobel v2
ASPIRIN
SALpeter
Blaster3
Vladimir's model
(dataのタブから閲覧できます。)
Fireworks5
Steigeisen

 

■コア分割

 

さて、主翼を自作する際は、主翼平面形の曲線を多角形に置き換える必要があります。

ピース数が多い方が曲線に近くりますが、接合部が多くなるのが問題。

接合部は手作業で翼型を整える必要があります。
慎重に接続しても、接合部の翼型が崩れたり段差が出来たりしますので
接合部が少ない方が好ましいです。

通常は2ピースもしくは3ピースとします。
4ピース以上は、製作に手間が掛かるのと接合部が多くなるのであまり採用されません。

 

<平面形デザイン>

<2ピース>

2ピースの場合は概ね2:1で分割します。

SuperGeeは2ピースの設計です。

<3ピース>

分割は翼端に向かって次第に小さくします。2ピースと比べると幾分なめらかですね。

翼端ピースを小さくする理由は翼端翼型の手成形をなるべく少なくする為。

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腕に自信があれば、接合部を滑らかに削って、前縁のラインを限りなく曲線に近づけるのも良いでしょう。

管理人の場合はヘタに削って翼型が崩れるのもいやですので接合部を中心に5センチ程度のみ
削り合わせてその他の部分は触らないようにしています。

 

■上半角

 

上半角は滑空時は自立安定性を高めることに寄与します。

一方でランチにおいては有害要素でしかないので、相反する要素となります。

市販機の上半角を調べて見ましょう。

機体
上半角
Akcent 2
6.3°
SuperGeeII
6.5°
Fireworks 4.2
Fireworks5
6.5°
Blaster3
6.5°
Fireworks5
6.5°
Aspirin
SALpeter
6.2°
Steigeisen
Stovel v2

概ね 6°〜6.5°が一般的です。

Steigeisenだけは上半角が5°で他の機体と異なる設計です。

機体を実際に製作する際には角度では測れませんので
上半角の角度を高さに置き換えて見ましょう。

上半角α(°)
6.0°
6.1°
6.2°
6.3°
6.4°
6.5°
6.6°
6.7°
6.8°
6.9°
7.0°
h(mm)
78.8
80.2
81.5
82.8
84.1
85.5
86.8
88.1
89.4
90.8
92.1

経験的にはやや大きめ(h=90ミリ位)で
いい結果が得られています。

 

■翼面荷重


翼面荷重の変化に伴い、機体性能がどのように変化するか
実際に機体を飛ばして実感はするものの、なかなか論理的に理解しずらいですね。

翼面荷重の変化に伴う飛行性能の変化について
工学的にどうなのか整理してみました。

<沈下率と滑空速度の関係について>

沈下率と滑空速度の関係

沈下率は滑空速度によって変化します。
近似式として
沈下率=滑空速度÷揚抗比

●部分が最小沈下率。

機体にはそれぞれ、最も沈下率が小さい(最小沈下率の)滑空速度があり、それ以上でもそれ以下でも沈下は大きくなります。

ある速度以下では失速します。


沈下率小さく飛ばすには
@の滑空速度をキープする必要があります。
Bのように滑空速度を落としすぎるとかえって沈下率が大きくなります。
Aの速度領域では速度を上げるほど沈下率が大きくなります。

 

 

<翼面荷重を大きくするとどうなるか?>


左図の赤いグラフのように

グラフが上に移動すると思っていたのですが、
違っていました。

(左図は間違い)

 

翼面荷重を大きくした場合の性能の変化はこの図が正解です。

青の機体にバラストを積んで翼面加重を増やすと赤色のグラフになります。

翼面荷重を増やすとグラフごと右上方向に持ち上がります。

 

翼面荷重が小さい機体の特性が活かせるのは・・・
@の速度領域:すなわち”ゆっくり”飛ばせる状態。
実戦では、微風でサーマルが薄いコンディション。

Aの速度領域では翼面荷重を増やした方が沈下率が小さくなります。

強風下など対気速度を上げる必要がある場合
バラストを積んだ方が良い理由が理解できます。

 


浮かせようとしてスピードが落ちてしまっていることありませんか?

それぞれの機体にとって最も沈下率が低い速度、最も揚抗比が高い速度があります。

パイロットは機体に最適な滑空速度をキープするよう細心の注意を払う事が肝要です。

 

■主翼図面のダウンロード(Template Download)

これまで 製作した中での傑作機のデータを公開します。

Hayabusa10

Salpeterを参考にしています。薄いサーマルも捉えてサーマルハントの醍醐味を楽しむことができます。Hayabusaシリーズの中でもお気に入りのひとつ。競技会にも参加した機体です。

主翼面積:21.6dm2
翼弦:180mm
翼型:Ah84

 

主翼平面型 plan download

テンプレート template download

これまで 製作した中での傑作機のデータを公開します。

Hayabusa18

snipeを参考にした競技志向のナロー機。足があり、広いエリアでの飛行が楽しめます。競技会にも参加した機体です。

主翼面積:19.6dm2
翼弦:160mm
翼型:AG18〜AG19

 

主翼平面型 plan download

テンプレートtemplate download

ヒンジライン Hinge line download

補強カーボン Stiffening carbon download